日本の警察は、完全なる階級制度になっている。
自分よりも階級が上の人間には、絶対服従の体育会系のような世界。
【警察庁と都道府県警察との違い】
日本の警察組織は、国と都道府県の警察機関から構成されている。
そのうち、国の機関に当たるのが警察庁。
警察庁は全国47都道府県の警察本部を指揮、監督する立場にある。いわば“国家警察”。
一方、警視庁をはじめ地方自治体が運営するのが都道府県警察。実際に犯罪捜査などを行う。
“実働部隊”を持ち、個人の生命、財産、公共の安全と秩序の意地といった、警察の責務を遂行するのが、これら“自治体警察”の大きな役目である。
【キャリアってどんな人達なの?】
国家公務員Ⅰ種試験の合格者から、将来の幹部候補生として警察庁が採用したエリート達のことをいう。
キャリアとは警察庁だけでなく、各省庁同様の呼び名である。現在警察庁には約520人のキャリア組がいる。
ちなみに、毎年警察庁が10名ほど採用する。
将来の長官、警視総監は、このキャリア組の中から生まれる。
【では、ノンキャリアってどんな人?】
各都道府県警察が実施する採用試験に合格し、警察官となった人達のことをいう。
エリートのキャリア組と区別する意味合いで使われる。
つまり、現在いる警察官のほとんどが、このノンキャリア。
ここから警察のトップまで出世する者はまずいない。
【キャリアの昇進システムは?】
まず警察庁に入庁した時点から、いきなり警部補からスタート。
キャリア組には昇進試験などはなく、入庁後、警察大学校で幹部となる帝王学を学び、警察署で見習い期間を経るなどしたのち、警部に昇進する。
ここまでたったの1年というハイペース。
その後、警察庁で2年勤務し、再び大学校で教育を受ければもう警視。
25~26歳で所轄の警察署長になれるとか。
ここからは警察庁や都道府県警察などを行ったり来たり。その間に階級や役職も上がり、出世街道をひた走る。
【一方、ノンキャリアの昇進は?】
ノンキャリアは巡査から始まり、警部までは階級ごとに昇進試験を受け合格しなければ、出世の道はない。
大卒の場合、実務経験1年(高卒なら4年)で巡査部長への受験資格を得られる。
合格すれば、さらに1年(高卒は3年)で警部補の受験資格。
そしてそれに合格すればさらに4年(高卒も同じ)で警部の受験資格・・・と、順調に合格していけば30歳で警部になれる。
ただし、これはあくまでも机上の計算。現実はそう甘くはない。
ましてや、ノンキャリアが定年までに警視以上になることは、至難の技に近い。
『踊る大捜査線』に描かれているような二重構造は、実際にはもっとシビアなのかもしれない。
【警察の階級表】
警察官の官職の最高位である「警察庁長官」を除く警察官の階級は、
「巡査」から始まり、「巡査部長」「警部補」「警部」「警視」「警視正」「警視長」「警視監」「警視総監」
と、警察法第62条に定められています。
階級 |
警察庁 |
警視庁 |
県警本部(大) |
県警本部(小) |
警察署(大) |
警察署(小) |
警察庁 |
長官 |
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警視総監 |
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警視総監 |
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警視監 |
局長 |
副総監 |
本部長 |
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警視長 |
課長 |
部長 |
部長 |
本部長 |
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警視正 |
室長 |
参事官 |
部長 |
部長 |
署長 |
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警視 |
課長補佐 |
課長 |
課長 |
課長 |
副署長 |
署長 |
警部 |
係長 |
係長 |
課長補佐 |
課長補佐 |
課長 |
課長 |
警部補 |
主任 |
主任 |
係長 |
係長 |
係長 |
係長 |
巡査部長 |
係員 |
係員 |
主任 |
主任 |
主任 |
主任 |
巡査 |
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係員 |
係員 |
係員 |
係員 |
係員 |
警視庁の警察官は、巡査部長以上の者しか在籍していない。
警視庁で採用になったキャリアは警部補から、準キャリアは巡査部長から警察官としてスタートする。
【階級ごとの説明】
■巡査(地方公務員)
まず、全国都道府県の警察官採用試験を受けて警察官になった人はみんなこの巡査からスタート。
全国都道府県の警察官採用は大卒、短大卒、高卒と3つに分けて採用しすべての人が警察学校卒業後、巡査として配卒されるが、この3つの違いは巡査部長昇任試験の受験資格。
大卒は巡査配卒後1年、短大卒3年、高卒は4年の実務経験が必要と巡査採用の違いによってだいぶ差がある。
◆巡査
麻宮サキ (斉藤由貴・南野陽子・浅香唯 スケバン刑事)
今泉 慎太郎(西村雅彦 古畑任三郎 '94)
中川圭一(こち亀)新葛飾警察署地域課
秋本麗子(こち亀)新葛飾警察署地域課
■巡査長(地方公務員)
この巡査長というものは実際は警察官の階級ではなく、巡査経験の長いものにを士気高を揚目的に与えられるもので、配卒後10年をめどに巡査部長になれない場合与えられるもの。
◆巡査長
両津勘吉 (こち亀)警視庁新葛飾警察署地域課
和久平八郎(いかりや長介 踊る大捜査線) 湾岸署刑事課強行犯係
タカ (舘ひろし あぶない刑事 '86)神奈川県港警察署捜査課刑事
ユージ (柴田恭兵 あぶない刑事 '86)神奈川県港警察署捜査課刑事
■巡査部長(地方公務員・警察官全体の約30%)
巡査になってまずはじめに経験する昇任試験がこの巡査部長。
採用の違いによってだいぶ受験資格も変わる。
特に警視庁や大都市の府県警の巡査部長昇任試験はかなりの競争率で100倍とも200倍ともなるらしい。
この巡査部長昇任試験合格後は管区警察学校で6週間の講習を受け警察昇進の第一歩を踏む。
警察庁は国家公務員Ⅱ種試験合格者を毎年10名ほど採用し、採用者はこの巡査部長からスタートする。
彼らは準キャリアと呼ばれ、ノンキャリアと呼ばれる都道府県警察官採用者は昇進後とに試験を受けなければならないが、彼らは年功序列に昇進して最高は警視長まで行く。
◆巡査部長
青島 俊作 (織田裕二 踊る大捜査線 最新作では警部補(係長)に昇格)
恩田 すみれ(深津絵里 踊る大捜査線)湾岸署刑事課盗犯係
柏木 雪乃 (水野美紀 踊る大捜査線)湾岸署刑事課強行犯係
亀山 薫 (寺脇康文 相棒 元警視庁組織犯罪対策部特命係員)
草薙 俊平 (北村一輝 ガリレオ '07) 警視庁捜査一課
安浦 吉之助(藤田まこと はぐれ刑事純情派)
高見 兵吾 (柴田恭兵 はみだし刑事情熱系 '96) 所轄署刑事課
大原部長 (こち亀) 警視庁新葛飾警察署地域課
海 俊夫 (キャッツ・アイ '81)捜査一課主任
■警部補(地方公務員・警察官全体の約30%)
巡査部長昇任試験合格後、次なるは警部補昇任試験。
これも巡査部長昇任試験と同じく受験資格がはじめの採用によって異なり、大卒で1年、短大卒2年、高卒4年となる。
この警部補、そして次の警部昇任試験合格後は警察大学校で講習を受ける。
警察大学校とは学校教育法で決まっている一般大学(東京大学、早稲田大学など)、他の省庁のもつ大学(運輸省気象大学校、国税庁税務大学校など)の大学とは違って外部からの受講生は一切受け入れず、一切が警察内部だけの教育機関となっている。
警察庁によって採用されるキャリアと呼ばれる国家公務員Ⅰ種試験合格者は、採用後すぐにこの警部補になる。
そのうえ、3ヶ月の初任幹部課程、9ヶ月間の警察署での実務の時点で警部に昇進。
このキャリアは年功序列に昇進し、その中の1人が後々の警察庁長官になる。
都道府県警察官採用試験で入ってきた警察官と比べると、キャリアはとんとん拍子に超スピード出世の道を歩んでいく。
◆警部補
古畑 任三郎(田村正和 古畑任三郎 '94) 警視庁刑事部捜査一課
杉下 右京 (水谷豊 相棒 後に警部に昇進)警視庁特命係・係長
神戸 尊 (及川光博 相棒 警視庁組織犯罪対策部特命係員)
真下 正義 (ユースケ・サンタマリア 踊る大捜査線 ※初登場時)
矢部 謙三 (生瀬勝久 トリック '02)警視庁公安部
後藤 喜一 (機動警察パトレイバー'89)警視庁警備部特科車両二課第二小隊長
野上 冴子 (シティーハンター'85)
雪平 夏見 (篠原涼子 アンフェア '06)警視庁刑事部捜査一課殺人犯捜査四係主任
■警部(地方公務員・警察官全体の約6%)
この警部から昇任試験の受験資格が大卒、短大卒、高卒ともに警部補合格より4年の実務経験になり差が無くなる。
キャリア、準キャリアは別としてここまで昇進するのは結構大変。
◆警部
銭形警部 (ルパン三世) ICPO総務局国際協力部第1課
真山 薫 (浅野温子 あぶない刑事 '86)横浜港警察署少年課長
町田 透 (仲村トオル あぶない刑事 '86)横浜港警察署捜査課長
大門 圭介 (西部警察 '82) 捜査課長
沙粧 妙子 (浅野温子 沙粧妙子-最後の事件- '95) 警視庁捜査一課所属
野々村光太郎(竜雷太 ケイゾク '99)警視庁刑事部捜査一課係長
目暮 十三 (名探偵コナン) 警視庁刑事部捜査第一課強行犯捜査三係
毒鬼 悪憎 (ついでにとんちんかん '89) 大日本警察署の警部
■警視(地方公務員・警察官全体の約2.5%)
この警視から上の昇任はすべて選考でおこなわれる。
平均してキャリアが25~26歳、準キャリアが35歳6ヶ月で警視になるのに対し、ノンキャリアではすべての試験を問題なく一度でパスしたと考えて平均で40歳程度になってやっとここまでくることができる。
警視とは小さい警察署で署長レベルの階級で、ノンキャリアでここまでくるのはほんの一握り。
◆警視
木暮 謙三 (石原裕次郎 西部警察 '82) 西部警察署 捜査課長 キャリア組
室井 慎次 (柳葉敏郎 踊る大捜査線 ※初登場時)捜査一課強行犯捜査担当管理官
秋山 晴海 (斉藤暁 踊る大捜査線) 湾岸署副署長
三上 薫 (加藤雅也 アンフェア '06) 警視庁刑事部鑑識課検視官 ノンキャリアでは異例の階級
■警視正(国家公務員・警察官全体の約0.5%)
巡査から警視まで所属は各都道府県の地方公務員だが、この警視正から所属が国家公務員となる。
もうここまでくるとほとんどノンキャリア出身者はいなく、大半はキャリヤ、準キャリア組みによって占められるようになる。
大きな警察署の署長はたいがい警視正。
◆警視正
神田 総一朗(北村総一朗 踊る大捜査線)湾岸署署長
横山 礼一郎(渡辺謙 池袋ウエストゲートパーク'00) 警視庁池袋西署署長
松村 優子 (木の実ナナ あぶない刑事'86)横浜港警察署長
■警視長(国家公務員・警察官全体の約0.5%)
警視庁と発音は同じだけど、これもひとつの上級階級。
ノンキャリアでここまできたならば、これはもうスーパー大出世、めったにノンキャリア組が警視長になることはない。
警察法施行規則にはこの警視長(警視正をふくむ)で545人と決められていて全国26万人の警察官で本当に微々たるもの。
小さい県警本部の本部長にはこの警視長が就く。
◆警視長
遠山刑事部長(名探偵コナン)大阪府警刑事部部長(遠山和葉の父)
内村 完爾 (片桐竜次 相棒)警視庁刑事部部長
■警視監(国家公務員,高級官僚・38人)
この警視監は警視長と比べるとさらに少なくたった20人。
もちろんほとんどが国家Ⅰ種を合格したキャリア組みによって占められるが、準キャリア組みも一部この警視監になることがあるらしい。
この20人の中からのちの警視総監、警察庁長官が選ばれることになる。
主に警視庁を除いた政令指定都市のある9府県の本部長はこの警視監。
◆警視監
室井慎次 (柳葉敏郎 踊る大捜査線3)警察庁長官官房審議官
小野田公顕(相棒 岸部一徳 警察庁長官官房室長)
夜神総一郎 (DEATH NOTE '04) 警察庁刑事局局長
■警視総監(国家公務員,高級官僚・1人)
全国26万の警察官の中でただ一人、警察官の階級としては最高の警視総監。
警視総監は警視庁の警察本部長で日本の首都、東京の警察の本部長として最も高い位になっている。
キャリア組みの出世競争で生き残った一人がこの椅子に座れる。
内閣総理大臣の承認を得て任免。
◆警視総監
野上警視総監 野上冴子の父(シティーハンター'85)
■警察庁長官(高級官僚・1人)
法律上は階級外だが警察庁長官を忘れてはいけない。
この職もキャリア組みの特等席だが警察庁、警視庁及び道府県警の監督、指示をだす長官であって警察官ではなくなる。
他の省庁の大臣、長官同様内閣に近い位置にいて政府の指示を的確に警察庁にあたえる職を担う。
オウム事件で有名になった国松長官を見てわかるように警察庁長官は事実上日本警察26万のトップなのだ。