淡白なイメージの顔に似合わない、粘り気のある舌がねじ込まれてきた。
いつの間にかがっちりとウエストを掴まれてる。
せめて身体を離そうとしても、まったく動かせなかった。
「ちょっと、まって。」
ねじ込まれたままだったので色っぽいどころかフガフガと間抜けな音が鳴る。
その抵抗がまた良かったのか、後ろ頭を掴まれて更に動けなくなった。
ここはまだ外でもないし、いくら個室とか謳っていても、
座面ギリギリの布のカーテンで仕切られているだけだ。
ちょっと覗き込めば確実に見えてしまう。
「失礼します」と店員の声に助けられた。
それと同時に、きっと見られたという恥ずかしさで
顔を上げることはできなかった。
何事もなかったかのようにその人は会計に応じ、
外に出ようか、と私を促した。
居酒屋を出るまでの間、見られたかも知れない恥ずかしさ、にとらわれて
なんてことのない段差に何回か足を取られ更に恥ずかしい思いをし
できることならさっと消えて部屋に帰ってしまいたいとすら思った。
外を歩くとき、「もっとこっちに」、と言われ
手をつなげる距離なのになんでだ?と不思議がりながらも近寄ると、
さっき席でされたように背中に腕を回しぐいっと引き寄せられる。
ほんの少し薄れたついさっきまでの消えてしまいたい気持ちが
また どどっとやってきたので
抵抗することもできずに足の動きに合わせて
揺れるコンクリートを見つめたまま歩いていた。