今回の窃盗事件で2016年3月末まで選手登録停止、所属先のデサントからも解雇されている。裁判のやり直しを求めるわけでもなく「やってない」と言うばかりの苦しい言い訳に世論はどう判断するのか。
■ JOC関係者があきれ果てた冨田の疑問点だらけ「冤罪主張」会見
真実はどこにあるのだろうか。9月に韓国・仁川で開催されたアジア大会期間中に、韓国通信社のカメラを盗んだとして略式起訴された競泳男子の冨田尚弥(25)が6日、名古屋市内で記者会見を開き、冤罪を主張した。3時間にわたり涙ながらに持論を展開した冨田だが、にわかには信じ難い話ばかり。一貫性のない説明は矛盾点も多く、今年話題の“あの人”との類似点を指摘する声まで飛び出した。
代理人の國田武二郎弁護士とともに会見場に姿を現した冨田は「僕はカメラを盗んでいません」と冤罪を訴えた。時折、涙を見せながら、約3時間にわたり自らの潔白を主張。しかし冨田の言い分は、疑問点だらけと言わざるを得ない。
冨田側は緑色のズボンをはいた東アジア系の男が、かばんの中にカメラを入れたと主張した。
その場で中身を確認しなかった理由を問われると「ゴミと勘違いしてしまいました」。しかし再度聞かれると「国際大会ではバッジなどを渡されたりすることもあるので、勘違いしました」と、ゴミから贈り物という対極の表現に変わっていた。
さらにゴミとして捨てるはずのカメラを選手村の自室まで持ち帰り、開いた状態の自分のトランクの中に置いていた。「部屋が狭く、通路に置くと同室の先輩の邪魔になるので」と説明したが、他人のゴミを自分のトランクの中に入れるのは明らかに不自然だろう。
また「防犯カメラの開示を希望するか?」を聞かれると「その時間(犯行時刻とされた10時48分)にはアリバイがある。公開してほしい」と希望。だが会見中に、韓国警察側が当初発表していた犯行時刻が10時48分ではなく11時48分だったと言っていることを指摘されると「韓国警察が公開するとなると、自分がとっている映像を作るしかないと思う」。さらに「韓国警察が『ビデオに写っている』と言っているのを聞くと(加工映像を)もう準備しているのかなと思う」と話した。
関係者によると、そもそも冨田が仁川で日本選手団関係者に「本当は(窃盗を)やっていない」と告げた際も「アジア系の男に渡された」「(カメラは)もらった」と話すなど、あいまいな供述だったという。それが、会見では「突然かばんに入れられた」に変化。主張に一貫性はなかった。
この日、冨田の弁明会見を聞いた、ある日本オリンピック委員会(JOC)関係者は「子供すぎる。その場しのぎで話しているとしか思えない」と、露骨に不快感を示した。別のJOC関係者も「『STAP細胞はあります』と言って証明できない小保方(晴子)さんのようだ」とあきれ果てた様子で話した。
こうした疑問の声が続出した弁明会見で、冨田は身の潔白は証明できたのだろうか。國田弁護士は「カメラについての知識も乏しく、興味もない。あんなに人目につきやすい場所でリスクを冒してまで、カメラを盗むだろうか。もし明確に窃盗場面が写っているなら、会見は恥の上塗りになる。何度も冨田くんに会見をしていいか直前まで聞いたが、彼は『絶対に盗んでいない』と言った」と、冨田の主張を信じていると説明した。
一方、沈黙を保ってきたJOCは真っ向から反論。事務局で幹部数人とともに記者会見の中継を見守った平真事務局長は「驚いている。(監視カメラの映像を見た職員から、冨田が)カメラをかばんに入れている姿を確認した」と報告を受けている事実を示した。警察の聴取に付き添った通訳の日本語も堪能だったとの見解を示した。
韓国からも反論が相次ぐなか、冨田は疑問点を明らかにし、潔白を証明する次の“一手”があるのだろうか。