■調布墜落機「絶対乗ってはいけない機体」の指摘 経営実態に不透明な部分も…
東京都調布市の住宅街に小型プロペラ機が墜落し8人が死傷した事故をめぐり、事故機を所有、管理していた会社の不透明な経営実態が明らかになってきた。同社関係者は、事故機について「『絶対乗ってはいけない機体』といわれていた」と証言。経営不振などを背景に、機体の整備が不十分だったという指摘も出ている。警視庁は28日に管理会社など3カ所を家宅捜索したが、航空業界の闇は暴かれるのか。
事故機は、単発プロペラ機「PA46-350P型」(通称マリブ・ミラージュ)で、1989年に製造された。2004年10月、札幌市の丘珠(おかだま)空港で着陸に失敗して機首部分から接地する事故を起こし、修理後の05年には、自衛隊機に異常接近するトラブルが問題となった。
いわくつきの機体だったわけだが、さらに不透明なのは、事故機をめぐる複数の会社だ。機体を所有するのは、不動産関連会社「ベル・ハンド・クラブ」(東京都福生市)で、整備・管理するのは「日本エアロテック」(調布市)。そして、事故機を操縦し、死亡した川村泰史(たいし)機長(36)のパイロット養成会社「シップ・アビエーション」(同)にリースしていたという。3社は28日に家宅捜索を受けた。
ベル社を知る関係者は「3つの会社は一体。ベル社の創業者と、エアロ社の小山純二社長は親族関係にあるようで、川村機長も、エアロ社の社員のようなもの。ベル社をトップとするグループ会社だ」と明かす。
民間調査機関などによると、ベル社は会員制レジャークラブとして1983年に設立された。富裕層向けに航空機、小型船舶、ロールス・ロイスなどの高級外車をリースし、バブルの最盛期には1000人以上の会員を獲得。個人会員600万円、法人会員1200万円と高額な入会金で数億円規模の年商を誇ったが、業績は次第に悪化し、2009年に東京地裁で民事再生計画が許可された。
ベル社の経営状態を知る関係者は、「数年前には、格納庫の地代を滞納したり、燃料代金の未払いもあったようだ。エアロ社の前社長時代は整備もしっかりやっていたが、前社長が約5年前に亡くなると、資金難もあり、整備がずさんになった。とくに事故機は、仲間内では『絶対に乗ってはいけない機体』といわれていた」と話す。
そんな中、調布飛行場で禁止されている「遊覧飛行」が常態化していた疑いも浮上している。利用客の一人は「8年ほど前に、ベル社所有の6人乗りの機体で伊豆大島に向かったが、そのときのフライトでは7万円を支払った。会員か、会員勧誘のために乗せるケースもあったようだが、いずれにせよ営業目的だったはずだ」と語る。
警視庁は、機体に何らかのトラブルが起きた疑いがあるとみて、業務上過失致死傷容疑で捜査を進めている。「起きるべくして起きた」(前出の関係者)という今回の事故。原因究明が待たれる。