ロペラミドという下痢の治療に用いられる薬があります。強く下痢を抑えることから市販薬や処方薬として流通しています。
このロペラミドはモルヒネ系の麻薬であるオピオイドと称され、合成麻薬と同じ構造をしています。動物実験でも長期使用後の依存性や離脱症状等が見られたため、米国で承認された当初は麻薬として扱われていました。
のちに、ロペラミドは通常量では脳には届かず、腸でのみモルヒネ類の特徴を表し、その結果、腸運動抑制作用により下痢止め効果が得られるとして麻薬指定はなくなりました。
このようにロペラミドは、フェンタニルのような、ほかの強力な合成麻薬と同じフェニルピペリジン誘導体でありながら、常用量では血液脳関門を通過しないと認知され、規制なく市場に出回ることとなったのです。
ところが2015年、このロペラミドを使用して多幸感を得る乱用者がいると報告されました。咳止めシロップを一気飲み(過量投与)するのと同じく、乱用者が現れたのです。
ただ、ロペラミド単体で多幸感を得るには、腸機能停止や心臓への副作用が起こりかねない大変な量を服用しなければならず、その報告は疑問視されました。ロペラミドを数百錠も購入して服用するならば、麻薬を使った方が安価で副作用もよく知られているではないか、ということです。
その後、調査が進むにつれ、ロペラミドとある薬と併用することで少量でもオピオイド(麻薬)の効果を発揮し、血液脳関門を通過することが判明しました。